心エコー、BNP、拡張障害

心エコー&BNP 正常値

・LADはBmodeの径が基本。高齢だと、42から異常ととり、45までは軽度拡大とする。

大動脈弁弁輪径 1.4~2.6 cm  弁口面積 3.0~4.0 cm2

 僧帽弁弁輪径  2.7~2.9 cm  弁口面積 4.0~6.0 cm2

 三尖弁弁輪径   ~3 cm 弁口面積 5.0~6.0 cm2

 肺動脈弁輪   1.0~2.2 cm   弁口面積 3.0 cm2 (参考)

 主肺動脈径 0.9~2.9 cm

 左室流出路径 18-22mm

 右心房:ME4Cにて 長径3.5~5.5 cm,短径2.5~4.9 cm

 左心房:ME4Cにて 長径3.4~6.1 cm,短径2.5~4.5 cm

 心室中隔 1.0cm以下

 右心室:ME 4Cにて 長径(拡張期)5.5~9.5 cm,短径(拡張期)2.2~4.4 cm  壁厚0.3~0.5cm

 左心室:ME4Cにて 長径(拡張期)6.3~10.3 cm,短径(拡張期)3.5~6.0 cm 壁厚0.6~1.1cm

 心膜 心嚢液貯留は<0.5>2.0 cm で重度・asynergyあればLV studyはsimpsonで。Teichholz法意味無し。

・PR 波形はノッチが入っていれば、PCWPは高くないと思う。

・PR PGはPHがあると当てにならない。肺毛細血管床の圧に関与するから。

・吸い込み血流(acceleration flow)があったらmoderate以上と言われるが、すべてがそうとは限らない。

⇐ 大阪労災技師さん曰く。

                     男性         女性

左室拡張末期径(mm)          48±4         44±3

左室収縮末期径(mm)          30±4         28±3

左室拡張末期容積係数(mL/m2)      53±11          49±11

左室収縮末期容積係数(mL/m2)          19±5          17±5

左室駆出率(%)                         64±5                 66±5

左室重量係数(g/m2)                    76±16                70±14

左房径(mm)                           32±4                 31±3

左房容積係数(mL/m2)                  24±7                25±8

 

右室拡張末期径(mm)                   31±5                 28±5

(心尖部四腔断面像で計測)

 

右室拡張末期面積(cm2)                 16±4                  13±3

(心尖部四腔断面像で計測)

 

右室面積変化率(%)                      44±13                 46±11

(心尖部四腔断面像で計測)

 

E/E’(中隔)                              7.4±2.2               7.9±2.2

E’(中隔,cm/s)                         10.0±2.8              10.8±3.2

E/E’(側壁) 5.5±1.8 6.2±1.8

E’(側壁,cm/s)                         13.5±3.9               13.7±4.1

Tei index(左室)                         0.35±0.10             0.33±0.09

 

・大動脈弁輪径;19 – 24mm

・僧房弁弁輪径;27 – 29mm

・三尖弁弁輪径;30mm以下

 

 

<E/A、DT、E/E´>

・下記は専門医を目指すケースアプローチ循環器疾患の教科書より。

弛緩障害(軽度拡張障害)ではなく、正常ないしは偽正常化のパターン、あるいは拘束型(高度拡張障害)のパターンのいずれかになる場合の時、DcT(>150ms)であれば拘束型パターンは除外され、正常か偽正常化になり、この両者の鑑別に組織ドプラが有用である。拡張早期移動速度e´は左室拡張能の指標として知られ、拡張障害が進行するにつれe´は低下する。教科書的にはe´とa´のバランスが、E波とA波と逆転していれば偽正常化である。本症例ではe´が11cm/sと速く、左室拡張能の低下はないと判断できる。

E/E´は、拡張能はみれない。LA圧を推定するのみ。

E/Aが異常値ということで心事故が多いということは言えるがE/Aにより拡張障害あると断言はできない。

今は、これらの指標でフォローしていくことが大事。

拡張機能障害というのは、例えば左室肥大があり、PCWPが高くて(正常上限でも)、EFが良い場合に、障害有りといえる。

HCMでは基本的に拡張能障害が認められ、パルスドプラ法を用いた僧房弁流入血流速波形では、左室弛緩の延長と心房収縮の相対的亢進を反映し、拡張早期波(E)/心房収縮波(A波)比の低下(<1)とE波の減速時間の延長を伴う左室弛緩障害パターンを呈することが多い。しかしながら、HCMにおける左房圧はE/A比など僧房弁流入血流速波形からは予測困難と報告されており、組織ドプラ法を用いた拡張早期の僧房弁輪速度の評価を行う必要がある。

・EF低下例(虚血心or DCMでEF 40%未満)では、E/AやDTが左房圧と、良好に相関

する。正常;PCWP ; 5 – 13である。

E/A>2  or  DT<180ms は、平均左房圧 20mmHg以上。

しかし、E/AやDTによる左房圧推定は、HCM、EF正常例、洞性頻脈例、Af例では除

外すべき。相関しない。しかし、E/E´は、これら疾患でも相関し、適用できる。

 E/E´<8 ;左房圧 12未満。

 E/E´>15;左房圧 12以上。

・EF低下を伴う基礎心疾患有りの患者で、

E/Aは偽正常型;軽~中等度の左房圧上昇の心不全

E/Aは拘束型;中等度~高度の左房圧上昇の心不全  と診断してよい。また、以前の安定期に記録したTMF(左室流入血流波形)と比べて悪化があれば、診断の妥当性は非常に高くなる。

・肺静脈ドプラーA波持続時間(AR dur) – 僧房弁流入A波の持続時間(A  dur) > 0

  だと、EDP 18 mmHg以上。これはEF正常例でも適用できる。

・左室拡張障害は以下の4段階(Grade 1 -4 )に分類される(Mayo Clinicの分類)

Grade 1    弛緩異常型(abnormal relaxation)   E/A<1,  LV-DT>220-240 ms

Grade 2   偽正常型(Pseudonormal)   E/A ; 1 – 1.5,  LV-DT ; 150 -240 ms

Grade 3   拘束型(可逆性)(Restrictive,reversible)   E/A>2,  LV-DT <140-150 ms

                                           治療により弛緩異常型に改善

Grade 4  拘束型(非可逆性)(Restrictive,irreversible)  E/A>2,  LV-DT<140 -150 ms

                                           治療しても弛緩異常型に改善しない

バルサルバ負荷は被検者に息を吸った状態で息止めさせて,胸腔内圧を高める負荷法である.胸腔内圧を高めると右房へ灌流する血流量が減少し,引き続いて徐々に左房へ灌流する血流量が減少する.バルサルバ負荷を行っている間は左房圧が減少していることになり,偽正常化型はバルサルバ負荷によってE/A比が減少するが,正常型では変化しないとされている.

Grade 3は下記の4つに分類される。

Ⅰ、弛緩異常型がうっ血性心不全をきたした場合

Ⅱ、重症僧房弁逆流

Ⅲ、弛緩異常型からさらに左室が硬くなった場合や拘束型心筋症

Ⅳ、収縮性心膜炎や心タンポナーデにより左室の拡張が妨げられた場合

・sever MRでは、左房圧上昇し、上記となる。

兵庫医科大学 内科学 循環器内科 教授  増山 理>   

 慢性心不全とは,心機能の低下を引き金とした神経体液性因子の活性化などの悪循環により心不全症状を引き起こした病態である。なかでも最近は拡張不全が注目されている。

 心エコー図による左室駆出率,左室拡大の評価は収縮不全の指標として非常に有用であるが,拡張不全の病態評価にはまったく役に立たない。そこで,収縮不全と拡張不全の両方の病態評価に役立つ指標として最近,左室流入動態が注目されている。正常な左室流入動態はE波とA波の二峰性の波形が記録されるが,虚血心,肥大心などなんらかの病変が心臓に起こると,通常E波が小さくなりA波が大きくなる。そして病変の進行に伴い次第に充満圧が上昇し,心不全になる。心不全になるとE波が大きくなり,さらに充満圧が上昇するとE波が非常に大きくなり,A波が小さくなる。たとえば心不全患者にβ遮断薬carvedilolを投与し改善すると,拘束型波形が偽正常化もしくは左室弛緩遅延波形に変化することがわかっている。

 したがって左室流入動態の評価は,拘束型波形もしくは偽正常化波形を示す疾患で心不全の予後が不良であることがわかり,治療にも用いることができるという点で非常に意義がある。

<拡張不全で鑑別されるべき偽正常化波形>

 2003年,米国メイヨークリニックのRedfieldらが分類した左室拡張障害の波形を図2に示す 1)。現在,正常波形と偽正常化波形は単に波形の特徴からだけでは判別できない。したがって左室流入動態を心不全の診断もしくは薬効評価に用いる場合,正常波形か偽正常化波形かを的確に判断することが非常に重要となる。2001年のGandhiらの報告では,拡張期心不全のE/A比が1.31程度であることから考えても,拡張期心不全では多くの症例が偽正常化波形であることが推測される 2)。

 当科の収縮不全と拡張不全において左室拡張障害程度を調べたところ,収縮不全の53%はE/A比が非常に高く(拘束型波形),一見して心不全とわかったが,47%は偽正常化波形であった。ところが拡張不全では79%が偽正常化波形で,拘束型を呈する症例は17%しかいなかった。したがって,拡張不全で特に偽正常化波形を判別する必要がある。

→→  ・収縮不全の心不全時;53%(拘束型波形)、47%(偽正常化波形)

    ・拡張不全の心不全時;17%(拘束型波形)、79%(偽正常化波形)

 

<偽正常化波形の検出方法>

 まず,正常波形を見たときに異常ではないかと疑うことが重要である。たとえば15年来高血圧症がある45歳男性で,明瞭な左室肥大があり,左室駆出率58%ではあるが心不全が疑われた症例があった。左室流入血流速波形で求めたE/A比が1.7で,年齢を考慮するとほぼ正常の波形であった。この症例の左室流入血流速波形が偽正常化波形であるかを鑑別する方法は3つある。1つ目は,Valsalva法により左室流入ドプラ血流速波形が変化するかどうかをみる方法である。E波が小さくなりA波が高くなるのが偽正常化波形の特徴のひとつである。E/A比が0.5以上低下するような症例は偽正常化波形と診断するべきであると,ここ数年言われている。

 2つ目は,組織ドプラ法による僧帽弁輪部移動速度の測定である。正常例では左室流入血流速波形,組織ドプラ僧帽弁輪部速度波形ともにE波が高くA波が低い。一方,偽正常化波形例では,左室流入のEとAは正常例とほとんど同じであるが,組織ドプラ僧帽弁輪部速度波形で求めたE’は低下している。したがってEとE’の比を求めることにより偽正常化波形が判別できる。すなわち左室流入血流速波形のE波は病気になるほど小さくなるが,心不全が進むとそれが正常化してさらに大きくなるという,いわゆる2方向性の変化を取る。正常例ではE/E’<8であるのに対し,E/E’≧15であれば,左室拡張末期圧が上昇した心不全と診断できる。なお8~15の間の場合は,これのみでは診断できない。

 3つ目は,連続波ドプラ法(三尖弁逆流・肺動脈弁逆流血流速計測)で肺動脈圧を推定する方法である。心不全になると,肺静脈圧さらには肺動脈拡張期圧が上昇し,同時に肺動脈収縮期圧も上昇する。左室流入E/A比では収縮不全例の約50%,拡張不全例の約80%が診断できなかったが,収縮不全例の約59%,拡張不全例の77%で流速増大すなわち肺動脈圧の上昇が認められた。したがって,この連続波ドプラ法を併用することで,左室流入血流速波形が正常か偽正常かが判断できると考える。ただし約20%の症例で三尖弁逆流の信号を検出できず,これは本手法の最大の限界である。また,肺動脈圧が高いからといって,すぐに心不全といえるとは限らないため,その点は今後のさらなる検討が必要である。

 左室流入血流速波形が偽正常化波形である場合,拡張不全では重症を意味する。偽正常化波形が疑われる場合,Valsalva法または組織ドプラ法による僧帽弁輪部移動速度を参照するか,もしくは連続波ドプラ法による肺動脈圧推定が役に立つ。最も重要なのは「偽正常化波形かもしれない」と疑うことである。E/E’≧15である場合,その症例は心不全であるか,もしくは予後があまりよい状態ではないと考えられる。たとえばβ遮断薬を導入する,または増量する必要があろう。もしくはさらに積極的な治療が必要と考えるべきである。

 

 

<NYHAとBNP

BNP ; 正常20 pg/ml以下

NYHA 1度 → BNP  20 – 50

                心疾患があるが症状は無い。

NYHA 2度 → BNP  50 – 100

                安静時は症状無いが、活動時に症状があるもの。

NYHA 3度 → BNP  100 – 200

                安静時は症状無いが、活動時には強く症状が出て日常生活が厳しく制

限される。

NYHA 4度 → BNP  200 – 300

                軽度の活動でも症状が出て、安静時で心疾患発作の危険性がある。

慢性心不全の退院時の指標は、BNP  200 – 250。

 

・NT-proBNPはBNPより腎機能の影響を受けやすい。

・経験的に、BNP ;50、NT-proBNP;500から心不全の状態を疑い、BNP;100-200、

NT-proBNP;1000くらいから急性心不全の可能性を考える。

BNP > 400、NT-proBNP>2000 ; 心不全の可能性高い。

BNP < 100、NT-proBNP<400 ; 心不全の可能性低い。

・急性心不全を生じると心筋障害を生じて、心筋が一部不可逆的にダメージを受ける。よ

って、①急性心不全を生じさせないこと、②急性心不全になればただちに血行動態の改善を図ることが心筋障害を最低限に抑える方法と考えられている。

スーパーノーマル

 左室拡張能の評価に,僧帽弁口血流速波形(左室流入血流速波形)が頻用されている.同波形は,拡張早期波(E)と心房収縮期波(A)で構成される.若年者ではE波高がA波高より大であるが,55~60歳くらいで同じくらいになり,高齢者ではE波高よりもA波高が大であるのが一般的である.

 この加齢による血流パターンの変化のメカニズムは,2つの相反する報告がある.一つは,左室心筋の性状が加齢により変化し,左室の弛緩能が低下するためにE波が低下し,そのために拡張早期に左室に流入できなかった血液が左房に残存するため,ストレッチされた左房が心房収縮期に血液を押し出すためにA波が増高するという説である.これに対して,左室圧から左室弛緩能の指標であるtauは加齢で延長しない,という観察結果をもとに,左室の弛緩能が加齢で低下するのではなく,加齢による体液量の低下に伴い前負荷が減少するためにE波が低下するのだろうという報告もある.

 ところが,70歳台でほかに器質的心疾患がないのに,E>Aである患者さんをしばしば経験する.これはなぜか?

 まず考えておかなければならないのは,“偽正常化パターン”でないかどうかである.いわゆる“収縮能(EF)が保たれた拡張不全型心不全“かどうかを確認する.これには,肺静脈血流速波形,僧帽弁輪運動速波形,肺動脈弁逆流などを検討して,ほかに左室拡張末期圧の上昇を示唆する所見がないかチェックしないといけない.また,三尖弁逆流血流速波形や下大静脈を観察して,続発性肺高血圧の有無も有用な情報となる.

拡張型心不全がないことが確認できたら,次は左房の収縮能が低下して,左房圧が上昇している状態でないかを疑う.検査時は洞調律でも,発作性の心房粗動,細動や上室性不整脈が最近起こっていた場合,一過性に左房収縮能が低下していることがある.これを左房スタニングという.あるいは,滅多にいないが,心アミロイドーシスやサルコイドーシス,多発性筋炎などで左房心筋のみに心筋病変が出現する場合があり,このような器質的左房機能低下も考えておかないといけない.この場合,左房の拡大を伴うことが多い.

 僧帽弁輪石灰化(MAC)のために,僧帽弁狭窄とはいえないまでも,弁口面積が小さくなってE波が増高し,E>Aとなることがある.この場合,E波の減速時間が延長している場合が多い.心尖部からの弔辞気宇断面で左室後壁側の僧帽弁輪のエコー輝度が上昇している場合は,MACがないかどうか,短軸断面で確認する必要がある.一カ所に限局したスポッティーMACが弁口面積に影響することはまずないが,ある程度(弁輪周囲の1/3程度)以上のMACがあれば,弁の開放に影響している可能性がある.

 また,心臓の外から左房が圧排されると左房圧が上昇し,E>Aとなることがある.食道がん,大動脈瘤などが左房を圧排するので,一応念頭に置いて,視野深度を少し深くして観察しておくことも大切である.
 以上のように調べてきても,まだ理由がつかない場合,年齢に比して左室弛緩能が正常に保たれている,“スーパーノーマル”を考えざるを得ない.

スーパーノーマルが存在するかどうか,今後も検討が必要である.

心嚢液貯留、心タンポナーデ

心嚢液貯留、心タンポナーデ

 

緊急ドレナージの適応は、タンポを起こしているかどうか、つまり、『バイタルの悪化や著明な心不全を来しているか』!!!

心嚢液貯留の原因は、

Ⅰ、悪性腫瘍

Ⅱ、甲状腺機能低下

Ⅲ、膠原病

Ⅳ、腎不全

Ⅴ、右心不全

Ⅵ、上行大動脈解離

Ⅶ、原因不明の心膜炎

ウイルス性(コクサッキー、エコー、EB、CMVなど)、細菌性(黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌など。結核も)、マイコプラズマ、真菌、寄生虫

Ⅷ、Inflammatory(炎症性)

心筋梗塞後症候群(Dressler's syndrome)、放射線による心膜炎など

Ⅸ、

尿毒症性心膜炎、薬剤性(プロカインアミド、イソニアジドなど)

中等度以上の心嚢液貯留を認める尿毒症性心外膜炎の治療に際しては, 非侵襲的治療を継続するか, 侵襲的治療が必要かを早期に判断することが重要であり, その基準, すなわち心嚢穿刺およびドレナージの実施の決定には, 1) intensive dialysisにもかかわらず心嚢液貯留が軽減しない時点, および2) 心エコー図所見において右房/右室壁の拡張期陥入, 虚脱像を認めた時点, 以上の2点の重要性が示唆された.

結核性心膜炎の診断は難しく、診断が遅れて心タンポナーデや収縮性心膜炎に至ってしまうこともあります。

感染症甲状腺機能低下症は想起できても膠原病というのは忘れやすいですね。

腫瘍性では肺癌、乳癌、白血病、リンパ腫などの心外膜への転移や浸潤が多く、原発腫瘍の頻度は少ないです。悪性中皮腫も有り。

心嚢水貯留は右心不全徴候の一つであると考えられています。

いろいろ調べても不明な時(おそらく心膜生検までしていないでしょう。またウイルス性心膜炎もどこまで精査したのか不明ですが)は『特発性』と診断されます。統計的にみて約1割~2割はこの範疇に入る可能性があるようです。

ANCA 関連血管炎の心病変合併の頻度は10~15%程度とされており,心外膜炎としての報告は極めて少ない.また,心外膜炎の原因疾患として血管炎・膠原病が関与する頻度は3%と低い.原因の明らかでない心嚢液貯留の場合にANCA 関連血管炎も鑑別疾患のひとつとして念頭に置く必要がある.

悪性腫瘍

◎ 男性では肺がんが、女性では乳がんが最も多い

白血病・Hodgkin病・非Hodgkinリンパ腫などの血液悪性疾患も原因のひとつである

◎ がん患者の最大21%に心嚢液貯留が起こるが、そのうち3分の2は無症状

◎ 心嚢液貯留を伴うがん患者の43%において、最初に検出されたがんの徴候が心嚢液貯留

縦隔の放射線照射

◎ 早発性と晩発性のものとがある

◎ Hodgkin病・乳がん・肺がんへの放射線治療に続発して起こるものが多い

代謝

甲状腺機能低下症(特に粘液水腫による)・慢性腎不全による尿毒症・卵巣過剰刺激症候群など

自己免疫疾患、リウマチ疾患・成人Still病など

薬剤性

◎ プロカインアミド、イソニアジド、ヒドララジンなどによる薬剤誘発性ループスなど3)

感染性

化膿性心膜炎

◎ 起因菌としてS.pneumoniaeやS.aureusが半分以上を占める2)

◎ 43%が胸膜肺疾患を合併という報告がある2)

ウイルス性心膜炎

◎ 原因ウイルスはEnterovirus、特にCoxsackievirusが一番多いが、同定されない場合、特発性心膜炎とされる

◎ 特発性心膜炎の約25%で再発が見られる

結核性心膜炎

◎ 致死率が40%以上にも及ぶ1)

◎ 心嚢液は白血球に富み、ADAが上昇し(>30 U/L)、血性であることが多い。

HIV患者は結核性心膜炎に罹患しやすい

(ヨーロッパやアメリカにおいて、M.Tuberculosisは急性心膜炎の原因の5%にも満たないが、HIV患者やアフリカでは、心疾患における原因の大部分を占める)

また、ほとんどが無症状であるが、HIV感染患者の10~50%に心嚢液貯留が見られ、その場合、感染が進んでいることが多い

◎ 肺結核の1%が心膜炎を合併する

心嚢液貯留を認めたら、上に挙げた“心嚢液貯留をきたす疾患” を念頭において、それぞれの疾患に応じた検査を行う。

心嚢液貯留という所見が、悪性腫瘍などの隠れた重大な疾患を見つけ出すカギになる。また、心嚢液貯留と併せて、患者さんの背景・基礎疾患を考慮することが、“幅のある疾患”と称される、結核HIV感染などの鑑別に役立つ。

若者でも心原性胸痛:急性心外膜炎

若年者でも忘れてはならない心原性の胸痛:急性心外膜炎

いつかまとめようとおもっていました。全訳ではありません。。

 

 

Acute pericarditis:NEJM 2004

 

臨床の問題点

心膜は心嚢腔によって分離された臓側心膜・壁側心膜から構成される。

心嚢腔は15~50mlの麦わら色の液体を含む。

急性心膜炎は単独の疾患あるいは全身性疾患の結果生じる。

死後分析によると心膜炎の発生率は1〜6%だが,生前に診断されるのは入院患者の0.1%だけで、胸痛を訴えるが心筋梗塞のない救急を受診した患者の5%。

心膜炎に起こりうる続発症は、心タンポナーデ、再発性心膜炎、収縮性心膜炎。

戦略とエビデンス

原因

急性心膜炎10人のうち9人は,その原因はウイルス性あるいは特発性。

他に,貫壁性の急性心筋梗塞の後、解離性大動脈瘤、鈍的あるいは鋭的な胸部外傷後、腫瘍の心膜浸潤、胸部の放射線療法後、尿毒症、心臓や他の胸部外科手術後、自己免疫疾患、ある種の薬物摂取の結果として生じたものなど。

評価

心膜摩擦音の聴取あるいは典型的な心電図所見(広範囲なST上昇)のある胸痛が急性心膜炎と診断される。

心膜炎と似た胸痛を引き起こす重要な疾患は、心筋梗塞肺塞栓症

病歴

胸痛は典型的には胸骨後方の痛みで突然発症し、胸膜性、吸気によって悪化。

仰臥位になると胸痛は悪化することが多く、座って前傾姿勢をとると軽減。

心筋梗塞のように、痛みは首、腕あるいは左の肩に放散することあり。

僧帽筋に分布する横隔神経は心膜を横断するため、胸痛が片方もしくは両方の僧帽筋稜まで放散する場合、原因として心膜炎を考える。

身体所見

心膜炎の患者のうち約85%は経過中に心膜摩擦音が聴こえる。

典型的には、摩擦音は高調で引っかくような甲高い音であり、胸骨左縁で呼気終末において,また体を前方に傾けた時に良く聴取される。

摩擦音の強さが分刻みでかわるため、心膜炎を疑った患者は繰り返し聴診すべき。

炎症を起こした臓側心膜と壁側心膜が擦れあうことで引き起こされると思われているが、大量の心嚢液がこれらの表面を分離する場合でも摩擦音は聴こえる。

心嚢液がなくなった時に、摩擦音は消失。

心膜摩擦音は胸膜摩擦音と混同してはならない。

心膜摩擦音は呼吸のサイクルの全体にわたって聞こえるが、胸膜摩擦音は呼吸を止めた場合には聴取されない。

低血圧症、頻脈、静脈圧の上昇、奇脈(吸気時に 10mmHg以上の収縮期圧の減少)は、心タンポナーデを示唆。

奇脈はタンポナーデに特異的ではないがとても感度が高い。

心膜炎の致死的合併症である心タンポナーデは、特発性心膜炎を持った患者の約15%で、また腫瘍性、結核性、化膿性心膜炎の60%で報告されている。

タンポナーデでは、心嚢液の蓄積→心嚢内の圧力↑→拡張期において右心房および右心室の虚脱→心拍出量の減少(心エコー検査によって直ちに評価を)。

38℃を超える発熱は珍しく、その場合は化膿性心外膜炎を考える。

その際、臨床医は分析のために心嚢液の採取を考慮するべきである。

心電図

急性心膜炎患者の12誘導心電図は古典的に広範囲の上向きに凹のST上昇およびPR部位の低下を示す。

心電図異常は4つの時相によって進行する。

(ステージ①):ST上昇およびPR部位の低下

(ステージ②):STとPR部位の正常化

(ステージ③):広範囲のT波の陰転化

(ステージ④):T波の正常化

ステージIの変化は,心膜炎患者の80%以上で観察される。

ST上昇は心筋梗塞の患者にも生じるが、いくつかの特徴によって、これらを鑑別することができる。

心筋梗塞において、ST上昇は多くの場合凹面であるというよりむしろ凸面であり(ドーム形)、また広範囲ではなく限局される。

Q波の形成およびR波電位の低下がしばしば生じ、STが基線に戻る前にT波の陰転化が現われる。

そしてPR部位の低下は珍しい。

房室ブロックまたは心室不整脈は一般的である。

最も信頼できる際立った特徴は、V6誘導におけるT波の高さに対するST上昇の比率かもしれない。

この比率が0.24を超える場合、急性心膜炎存在確立は非常に高い。

胸部X線

胸部X線写真は,主として心膜炎の原因かもしれない縦隔または肺野での異常を除外するために行なわれる。

心拡大は心嚢液貯留(250ml以上)を表す。

血清学的またはその他の検査

様々な検査戦略のコスト有効度を評価するデータは足りない。

白血球数、赤沈およびCRPは急性心膜炎の患者では通常上昇。

著しい白血球数の上昇は、化膿性心膜炎の存在を示唆。

臨床症状によって、追加の検査をオーダーする(抗核抗体、HIV感染の血清検査など)。

抗核抗体およびリウマチ因子を含むルーチンの血清検査によって、患者の10〜15%に心膜炎の原因が判明する。

特発性心膜炎の患者は,恐らくウイルス感染を持っているが、ウイルス培養および抗体滴定は臨床的に有用ではない(ウイルス感染の証拠が集まっても治療方針の変更は生じないため)。

血漿トロポニンは、心膜炎患者の35〜50%で上昇。

トロポニン値は通常診断後1〜2週以内に正常に戻る。

トロポニン値が高くても予後が悪いとはいえないが、高値が遷延する場合(2週間以上)は関連する心筋炎を示唆し予後が悪い。

CPKおよびMB画分は上昇するかもしれないが、多くの場合トロポニンより異常値を示す頻度は少ない。

心臓超音波検査

心嚢液の存在は診断に有用なので、経胸壁心エコー検査は心膜炎が疑わしい患者において推奨される。

タンポナーデの所見を認める場合は心嚢穿刺が必要。

心エコー検査は,心膜炎を示す明白な証拠を持った患者においては不必要で、予後因子の情報としては乏しい。

心嚢液穿刺および生検

化膿性または腫瘍性心膜炎と診断がついているか、それらが疑わしい心タンポナーデの患者には心嚢穿刺の適応がある。

原因不明の少量あるいは中等量の心嚢液貯留では、心嚢穿刺も心膜生検も診断には役立たない。

ルーチンの臨床検査および血液検査での評価後も原因が特定できない急性心膜炎の連続231人の患者において、心嚢穿刺および心膜生検はそれぞれ6%と5%しか診断がつかなかった。

原因不明のタンポナーデ患者では、心嚢穿刺および心膜生検はそれぞれ29%と54%で診断がついた。

心嚢穿刺を行う場合、赤血球数と白血球数、細胞診および中性脂肪など調べるべき(ミルク色と粘度を持った心嚢液は乳糜水を示唆)。

pH、糖、LDH、タンパク濃度はよく測定されるが、心膜炎の原因を特定できることは少ない。

心嚢液は微生物を調べるために顕鏡する必要があり培養もすべき。

PCR法やADA活性高値(30UL以上)は結核菌の識別において有用。

心膜生検は治療にもかかわらずタンポナーデが再発する患者には考慮されるべき検査である。

治療

心膜炎の特定の原因が判明した場合、治療はそれに基づいて行う。

特発性心膜炎の患者のための治療は、胸痛と炎症の軽減に向けられる。

だがそのような治療によって、タンポナーデや収縮性心膜炎の続発あるいは心膜炎の再発を防ぐことはできない。

NSAIDsが治療のメインであり、観察研究では患者の85〜90%で胸痛を和らげるのに有効。

アスピリン(2〜4g/day)、インドメタシン(75〜225mg/day)およびイブプロフェン(1600〜3200mg/day)が最もよく処方されており、副作用の少ないことからイブプロフェンが好まれている。

最近心筋梗塞を発症した患者には,アスピリンが望ましい(NSAIDsの害がでやすいので)。

インドメタシンは冠血流量を減弱するので、冠動脈疾患を持った患者では避けるべきである。

コルヒチン(0.6mgを1曰2回投与)は、単独もしくはイブプロフェンとの併用で急性心膜炎の治療に有効と思われる。

コルヒチンは再発性の心膜炎患者に好んで使用される。

NSAIDs、ステロイド、心嚢穿刺あるいはそれらの併用治療にもかかわらず再発する心膜炎51人の患者の多施設臨床試験では、コルヒチンで治療された患者のうちの7人(14%)だけが経過観察中の1004patient-monthsで再発した。

典型的には、症状は抗炎症治療の開始から数日以内に改善する。

胸痛がNSAIDsによる治療にもかかわらず2週間続く場合、他のNSAIDsに変更するかコルヒチンを併用すべきである。

併用治療にもかかわらず胸痛が続ければ、ステロイドを考慮する。

ステロイドに対する効果不良は投与量が不適当か漸減するのが早過ぎる場合が多い。

低用量のステロイド短期投与後に心膜炎が再発した患者は、高用量のプレドニゾロン治療(1〜1.5mg/Kg/day)を4週間行うことによって、症状が改善することが多い。

プレドニゾロンで急性心膜炎を治療することは,再発の危険を増加させるかもしれないという懸念がある。

観察研究では、ステロイドを初期に投与された患者は、投与されなかった患者より心膜炎が再発する傾向があるよう。

動物実験では、ステロイドがウイルス性に引き起こされた心膜の障害を悪化させたことを示した。

これらのデータから,心膜炎の初期にステロイドのルーチンで投与はしないほうがよい。

ステロイドの全身投与(プレドニゾロン1〜1.5mg/Kg/day)は、膠原病、あるいはNSAIDsとコルヒチンに反応しない症状の強い再発性の心膜炎患者に制限されるべきである。

しかし、非吸収性ステロイド剤の心嚢内への点滴投与は、難治性,再発性心膜炎の症例に非常に有効に思われる。

ほとんどの患者は、急性心膜炎の症状は2週間未満で経過良好である。

少量〜中等量の心嚢液の場合、通常数週間内に解消するため、診断または治療のための入院はほとんど不要。

症状が再発しないか新たな症状が現われなければ、フォローアップ評価は必要ない。

予後不良を示す指標:38℃以上の発熱、亜急性の発症(数週間かけて症状が進行する)、免疫抑制状態、外傷に関連した心膜炎、経口の抗凝固療法、心膜心筋炎(心膜炎に臨床的,血清学的に証明された心筋障害の併発)、多量の心嚢液(幅20mm以上のecho-free space)、心タンポナーデ

心筋炎の血清学的な基準はきちんと定義されていないが、特に1週間以上持続するCPKの上昇に注意。

これらの徴候を1つ以上持った患者は、タンポナーデと化膿性心膜炎から,致死的経過を含む重篤な合併症を併発する危険性が高い。

予後不良の因子がなく、入院せずに治療を受けた253人の患者についての報告では、平均フォローアップ期間39か月間に重大な合併症なし。

アメリカのガイドラインは、心膜炎と診断がついているか、心膜炎が疑わしいすべての患者に心エコー検査を行うように勧めている。

その後の心エコーは、病状が安定していて心嚢液が少量の患者では推奨されない。

心嚢液の再発か収縮性心膜炎の初期が疑われる場合、心エコー検査を行ってもよい。

 

急性心膜炎の診断および治療をガイドするための無作為化試験は不十分である。

特発性心膜炎患者の15〜30%で生じる心膜炎の再発を防ぐ手段について、更なる研究が必要である。

再発性がある場合、心膜切除術の適応がありえるが、症状が改善することはめったにない。

データ上、心膜の物理的侵襲(心膜切除あるいは開窓術)は再発を促進すると示唆している。

ほとんどの患者では、再発性の心膜炎の治療は,主に保存的治療となる。

観察上のデータは、コルヒチン投与が心膜炎の再発に対する最良の予防策であることを示している。

再発性の場合,心嚢液貯留をしばしば伴うが、タンポナーデと収縮性心膜炎はめったに生じない。

したがって、これらの心嚢液はドレナージする必要はない。

 

結語

急性心膜炎を持った患者では、多くの場合原因は特発性かウイルス性。

その診断は、臨床の判定規準(つまり典型的な心電図所見を伴った心膜摩擦音か胸痛)に基づく。

検査は 慣例的に不要である。

心嚢液を分析するための単純な心嚢穿刺は診断情報が得られないことが多く、心タンポナーデ、化膿性、腫瘍性の心膜炎が疑われる患者に行うべき。

38℃以上の発熱、亜急性の発症、免疫抑制状態、外傷の既往、経口抗凝固療法の既往、心膜心筋炎、多量の 心嚢液あるいはタンポナーデを示す証拠を持たなければ、評価および治療は外来通院で行うことができる。

急性心膜炎はNSAIDs単独あるいはコルヒチンとの併用で優れた反応を示し、短期間で良好な経過をたどる。

いくつかの研究によってステロイドの初期投与が再発の危険を増加させる可能性が示唆されており、NSAIDsの複合治療に反応しない心膜炎患者に限り行うべき。

ペースメーカ基礎

ペースメーカ

 

 

 

<ペースメーカの適応>

 

Ⅰ、SSS

 

Ⅱ、房室ブロック

 

Ⅲ、徐脈性Af

 

 

※AAI(ApAs)、VVI(VpVs)、DDDの3つが大事。

VVIR ;

最初;ペーシング部位;V  A   D   

2番目;センシング部位

3番目;センシングした後の動作;T=Triggers Pacing(同期)  I=Inhibits Pacing(抑制)

 

VDD(VpAsVs) ; シングルリード、シングルなのでリードが切れたら終わり。もう使用されなくなった。

 

DDDについて;

ペーシングとセンシングを心房、心室で行う。R波をセンシングすると心房、心室ともにペーシングを抑制する。P波をセンシングすると心房ペーシングを抑制し、決められたA-V時間の後に心室ペーシングを行う。

 

DDDの主な設定;

基本レート;50ppm  ~ 70ppm

AV間隔;150msec ~ 250msec  PQ間隔;200msec以内

上限レート;120ppm ~ 140ppm

出力;2.5v, 0.4msec(心房)

   2.5v, 0.4msec(心室)

感度;0.5 mV(心房)

   2.5mV(心室)

★センシング感度(Sensitivity)

A.Vの出力;閾値の3 ~ 5倍で設定する。だいたい 2.5 V ~3.5 Vで設定する。

 

 

 

 

 

同期(Trigger)について;

DDDは、最近はすべて、T(同期)はついている。

上から1番目、2番目の写真のように、

必ず、P波を感じて、次にペーシングしようとする。

その時に、自己のR波があると抑制がきき、打たない。

Upper rateが120で設定していたら、Af発症して、HR 110くらいでペースメーカもついていって、HR 110くらいでT(同期)して、ペースメーカはついていく。

DDI ;

1番下の写真。

一方で、upper rateの制限設定は無い。同期(T)がない。常に、HR 60で打っている。

 

ATR(=atrial tachycardia response ; 心房頻拍応答機能)

一過性の心房性頻脈を持っている患者は、DDIと一過性になり、心房性頻脈時、不適切に速い心室ペーシングを予防する。

 

 

レートレスポンスの主な設定;

基本レート     ; 60ppm

上限センサーレート ; 130ppm

出力        ; 2.5V, 0.5msec

感度        ; 2.5mV(心室)

 

 

<洞不全症候群>

Total QRS が6万ビート以下;ペースメーカ適応。

Ⅰ型;洞徐脈、Ⅱ型;洞停止、Ⅲ型;徐脈頻脈症候群

洞不全症候群では心房ペーシング(AAI)のみで十分なはずだが、房室ブロックを合併する可能性も考え、通常心房ペーシング(DDD)が埋め込まれる。

しかし、そのために不要な右室ペーシングが行われ、右室壁運動にdyssunchronyが生じ、心不全、Afの発症リスクが高まる。

通常は、AAIモードで作動し、房室伝導が悪化した時のみDDDモードに切り替わるMedtroic社のMVP(managed ventricular pacing)というシステムが開発された。

MVP機能を搭載したDDDペースメーカでは、洞不全症候群におけるAfの発生が40%も抑制された。

 

 

<房室ブロック>

房室ブロックでは、通常DDDモードを設定する。

VVIに設定してあるなら、ope時間を短縮する何らかの理由があるか、Afがあるか、である。VVIは1本リードなので不安定である。

 

 

★★ペースメーカ外来

 

オーダー① → テンプレート → ペースメーカ外来

 

閾値;心房 1.0 V以下がO.K.  

心室  1.0V以下がO.K  1.5VくらいならO.K

       ペースメーカ機械がすでに0.35 ms ~ 0.40 msで設定してある

感度;どれだけ感じているか。なので、値が高ければ高いほどよい。P波もしくはR波

   どれだけ感知できるか。

   心房;2 ~ 3 mV以上(1だと低い!!!徐々に下がっていっていれば、胸部xp

を!!)あればO.K.、

心室;7 ~ 8 mV 以上(5くらいあればよい。3は低い!!!)あればO.K.

※感度、1.5と4で、覚える!

※抵抗;1000以下であればO.K.

リード抵抗(インピーダンス)

→ 正常;300-1000くらい

※教科書的には、

ペーシング閾値

1.0V 以下、できれば0.5V以下が望ましい。

センシング閾値

R ; 7mV以上、できれば10mV以上が望ましい。

P;1.5mV以上

 

 

<Telemtry>

電池寿命

 

 

 

<VPC>

ホルター心電図で、20%以上の割合だったらアブレーションが効果あるとされる。アブレーションした方がBNPが下がる。以前、森下先生が50%のVPCでアブレーションして心不全改善したとのこと。

 

 

<failureの理由>

Ⅰ、リードのダメージ。リードは曲がっているから。収縮、拡張で常に曲がったりしている。

Ⅱ、本体の回路がダメになった。

Ⅲ、DCMみたいに心筋組織が変性してダメになった。

 

 

<VVIモード>

緊急体外式ペースメーカ術ではVVI。

HR;30台の患者で、HR;70に設定して、

感度(緑);最初、5mVにして徐々にさげていく。スパイクが出始めた時点が閾値

アンダーセンシング;感知しにくくなった状態。自己波形が出ているのに、一定の間隔でスパイクが出る。スパイクがT波に重なるとスパイク on TでVTに移行する恐れがある。

オーバーセンシング;感知しすぎる状態。筋電図やノイズを誤認してペーシングが必要な状態でもペーシングしない。

例)、センシング:10mVでアンダーセンスしたため2mV、この設定は間違ってますか?

→アンダーセンシグだったら、数値の設定を下げる!!

センシング感度はセンシング閾値の1/2~2/3以下 が適切とされていますので、 その設定で特に問題ないと思います。

 オーバーセンシングだったら数値を上げる!!!

 

 

1番多いのが、DDD。次に多いのが、VVI。最も良いのが2本リードだが、不穏が多くて2本も入れ れない人もいる。だいたい3つ。

① DDD、②AAI、③VDD、④おまけでVVI

①  2ch、2本リード:DDD、DDI、②2ch、1本リード:VDD、③1ch、1本リード:VVI、AAI

 

 

 

<VDD>

· 1本リード。自分の脈を利用して、Vを打っている。洞停止(SSS)が無い人に適応。

 

<VVI>

· 除脈性Afが適応。

· Aを入れる意味が無いから。

 

<頻拍性Af>

アブレーション ペース VVI

→ ジャンクションを切って、VVIを。

 

 

 

 

 

 

 

絶対不応期;

どのような電位もセンスしない。

相対不応期;

センシングは再開する。しかし、抑制や同期といった反応をしない期間。

また、不応期内でセンスをした時点より、再度、不応期が設定される。

 

 

不応期;不応期の期間を長くすればするほど、自己をより打たせる設定となる。

HR 70ppm  、不応期 350msに設定されているAAIです。

1~3拍目は、心房スパイクを認めることから、ペースメーカによる刺激による波形である。

4拍目は、スパイクが無いので、自己のP波です。それをペースメーカがセンスして、そこから不応期が始まります。不応期350sm 内に、次の自己のP波があるので、5拍目も自己が、抑制されずに自己波が打たれました。

ここで、不応期をより短くすれば、ここだと320ms以下にすれば、5拍目の自己波は抑制できます。

※DDDの主な設定;

基本レート;50ppm  ~ 70ppm

AV間隔;150msec ~ 250msec  PQ間隔;200msec以内

※不応期; 250msec ~ 300msec で基本設定されている。それを超えて悪いことが起こることはほとんどない!!!

上の写真のAAIでは、不応期は心房興奮後に設定されるが、DDDの場合の不応期は心室興奮後に設定される。なぜか。

→ 心室の興奮が心房よりずっと大きいため、心房のリードが間違って心室の興奮を、心房の興奮と感知してしまう可能性があるため、、、、、上記設定となる。

→ 一部の患者では、心室を電気刺激すると、その興奮が心房まで伝導してしまうことがある。これを逆伝導という。その時に、心室後の逆伝導を、P波であると感知してしまう可能性があるため、、、、、、上記設定となる。

※逆行性伝導がある患者の場合には、PVARP(Post Ventricular Atrial Refractry Period)不応期を、20~30msex延長させる。

 

 

直接、体に、電気を通すもの、外へ強い電磁波を出すものに注意。

 

電気毛布、IH炊飯器 ;

普通に使用する限り、影響は与えない。

しかし、長時間使用するものだから、できれば事前にふとんを温めておき、眠るときはコンセントを抜くほうがよい。

ピップエリキバンは、貼るのはかまわないが近いところに貼らない。

 

体脂肪計は、使用しない。

全自動マージャン卓は、使用しない。

電気風呂はダメ。

マッサージチェアは、基本的には大丈夫。今の電気製品は、基本的に御高齢対象(ペースメーカも多い対象群)のために作られているものだから。もし、気分が悪くなった場合は、そこから離れて下さいとだけ、伝えればよい。もしあるとしたら、ペースメーカが自己脈と感知してしまい、脈を打たなくなることがあるかもしれない。

 

植え込み後、1 – 3ヶ月すれば、散歩、軽いジョギング、ゲートボール、プールの中を歩くなどの運動は良い。たいていの運動に制限は無い。

激しく体がぶつかる運動、柔道などはやめる。

ペースメーカの植え込み部位に近い腕の筋肉を続けて動かす運動、腕立て伏せ、鉄棒のぶら下がりなども避ける。

 

ヒステリシス(hysteresis);

自己のQRSをできるだけ温存するためになされる設定。

設定レートは60ppmでも、ヒステリシスの設定レートが50ppmに設定してあると、自己脈の後のみ50ppmまでいつもより長めに待つ。

 

心室セーフティペーシング(VSP);

心房ペーシングとほぼ同時にPVCが発生した場合、Spike on Tになる可能性がある。そこで、心房ペーシングから110ms以内にV sense(VS)があると、VSPが作動し、心房ペーシングから110msでV ペーシングが起こる。これをVSPという。

そんな難しいことしなくても、まったく逆にVペーシング自体をしなければよいのではないかと思われるだろう。しかし、このAVdelayの間に、心房の自己の脈などの電気現象も生じえる。

 

 

※DDDの主な設定;

基本レート;50ppm  ~ 70ppm

AV間隔;150msec ~ 250msec  PQ間隔;200msec以内

※不応期; 250msec ~ 300msec で基本設定されている。それを超えて悪いことが起こることはほとんどない!!!

 

PVARP自動延長機能;

PVCによる逆行性P波を感知し(一部の患者では、心室を電気刺激すると、その興奮が心房まで伝導してしまうことがある。これを逆伝導という。その時に、心室後の逆伝導を、P波であると感知してしまう可能性がある)、これにより上室頻拍が誘発されることがある。もし患者側に心室の電気興奮を心房に逆伝導する機能(室房伝導)がある場合には、心房から心室への伝導はペースメーカで、心室から心房への逆伝導は自己の機能で、行う形となり、ひとつの興奮旋回路が生じてしまう。この上室頻拍をPacemaker-mediated tachycardia(PMT)と呼ぶ。

メドトロは、PMTの原因の1つであるPVCが起こった時に、自動的にPVARPをその時だけ400msに延長し、PMTへの移行を回避する。

 

 

 

xience知識資料

メーカーからの資料引用;

 

Xience資料

 

日本におけるCoCr-EESXIENCE V / PROMUS)の市販後調査(5)からのエベロリムス溶出ステントの5年間の臨床転帰

Aoki J 1Kozuma K 2Awata M 3Nanasato M 4Shiode N 5Tanabe K 6Yamaguchi J 7Kusano H 8Nie H 8Kimura T 9 ; XIEVCE V / PROMUS PMSの研究者

著者情報

抽象

コバルトクロムエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)ポストマーケティングサーベイランス(PMS)日本の研究は、XIENCE V / PROMUSエベロリムス溶出ステントの日常的な臨床実践における安全性と有効性を評価するために設計された、日本の臨床環境。我々は、CoCr-EESを使用して経皮的冠動脈インターベンションを受けた2010年の連続患者(2649病巣)を登録した。臨床結果は5年間で評価された。平均年齢は68.8歳であり、41.9%が糖尿病であり、4.9%が血液透析を受けていた。1704人(84.8%)の患者に対して、5年間の臨床的追跡調査が可能であった。心臓死(3.8%)、心筋梗塞(1.8%)、および臨床的に駆動される標的病変血行再建(TLR)(6.0%)を含む患者の10.7%において、主要有害心血管イベント(MACE)が発生した。1年を超えると、臨床的に駆動されるTLRの年間発生率は0.5-0.8%であった。確定的または可能性のあるステント血栓症は、5年で9人(0.5%)の患者に発生した。1年後、確定的なステント血栓症はわずか1人の患者で生じた。MACEの重要な予測因子は、透析(ODDs比4.58,95%CI 2.75-7.64)、心臓インターベンション(ODDs比2.47,95%CI 1.75-3.49)、総ステント長(ODDs比1.01,95%CI 1.01-1.02) 、罹患血管数(ODDs比1.66,95%CI 1.08-2.55)であった。CoCr-EES PMS Japan試験の5年間の臨床結果は、5年間の日常練習において臨床事象の発生率が低いことを示した。MACEの重要な予測因子は、透析(ODDs比4.58,95%CI 2.75-7.64)、心臓インターベンション(ODDs比2.47,95%CI 1.75-3.49)、総ステント長(ODDs比1.01,95%CI 1.01-1.02) 、罹患血管数(ODDs比1.66,95%CI 1.08-2.55)であった。CoCr-EES PMS Japan試験の5年間の臨床結果は、5年間の日常練習において臨床事象の発生率が低いことを示した。MACEの重要な予測因子は、透析(ODDs比4.58,95%CI 2.75-7.64)、心臓インターベンション(ODDs比2.47,95%CI 1.75-3.49)、総ステント長(ODDs比1.01,95%CI 1.01-1.02) 、罹患血管数(ODDs比1.66,95%CI 1.08-2.55)であった。CoCr-EES PMS Japan試験の5年間の臨床結果は、5年間の日常練習において臨床事象の発生率が低いことを示した。

Cardiovascular Intervention and Therapeutics

pp 1–7| Cite as

Five-year clinical outcomes of everolimus-eluting stents from the post marketing study of CoCr-EES (XIENCE V/PROMUS) in Japan

リアルワールド調査;

Abstract

The Cobalt Chromium Everolimus-Eluting Stent (CoCr-EES) Post Marketing Surveillance (PMS) Japan study is a prospective multicenter registry designed to evaluate the safety and efficacy of XIENCE V/PROMUS everolimus-eluting stents in routine clinical practice at 47 centers representative of the clinical environment in Japan. We enrolled 2010 consecutive patients (2649 lesions) who underwent percutaneous coronary intervention using CoCr-EES. Clinical outcomes were evaluated through 5 years. Mean age was 68.8 years, 41.9% had diabetes, 4.9% received hemodialysis. Five-year clinical follow up was available for 1704 (84.8%) patients. Major adverse cardiovascular events (MACE) occurred in 10.7% of patients, including cardiac death (3.8%), myocardial infarction (1.8%), and clinically driven target lesion revascularization (TLR) (6.0%). Beyond 1 year, annual incidence of clinically driven TLR was 0.5–0.8%. Definite or probable stent thrombosis occurred in 9 (0.5%) patients at 5 years. After 1 year, definite stent thrombosis occurred in only 1 patient. Significant predictors for MACE were dialysis (ODDs ratio 4.58, 95% CI 2.75–7.64), prior cardiac intervention (ODDs ratio 2.47, 95% CI 1.75–3.49), total stent length (ODDs ratio 1.01, 95% CI 1.01–1.02), and number of diseased vessels (ODDs ratio 1.66, 95% CI 1.08–2.55). Five-year clinical outcomes from the CoCr-EES PMS Japan study demonstrated a low incidence of clinical events in the daily practice up to 5 years.

 

STOPDAPT-2

ShorT and OPtimal Duration of Dual AntiPlatelet Therapy-2

2剤併用抗血小板療法の短縮・至適期間。

目的:

everolimus溶出コバルト-クロムステント(CoCr-EES)留置後の 2剤併用抗血小板療法(DAPT)期間を1ヵ月に短縮した場合の安全性を評価する。
主要評価項目は,12ヵ月後の心血管死,心筋梗塞(MI),definiteステント血栓症脳卒中,TIMI定義の大・小出血の複合エンドポイント。

デザイン:

ランダム化,オープン,多施設。

セッティング:

期間:

追跡期間は5年。
2015年12月試験開始,終了予定は’23年12月。

対象:

3,000例の予定。CoCr-EES(Xience)によるPCI施行例で,経口DAPTが可能なもの。
除外基準:経口抗凝固薬が必要なもの,頭蓋内出血既往,PCI後の入院期間中の重大な合併症(MI,脳卒中,大出血)歴,Xience以外の薬剤溶出性ステント留置例,aspirinおよびP2Y12受容体拮抗薬以外の抗血小板薬持続投与を要するものなど。

方法:

DAPT 1ヵ月群:aspirin+P2Y12受容体拮抗薬を1ヵ月実施後,clopidogrelを59ヵ月単独投与。
12ヵ月群::aspirin+P2Y12受容体拮抗薬を1ヵ月,aspirin+clopidogrelを11ヵ月投与後,aspirinを48ヵ月単独投与。

上記はCAPRIE試験の結果を受けて、プラビックスで評価したとのこと

 

 

CAPRIE試験;

A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE)

CAPRIE Steering Committee*

Summary

Background

Many clinical trials have evaluated the benefit of long-term use of antiplatelet drugs in reducing the risk of clinical thrombotic events. Aspirin and ticlopidine have been shown to be effective, but both have potentially serious adverse effects. Clopidogrel, a new thienopyridine derivative similar to ticlopidine, is an inhibitor of platelet aggregation induced by adenosine diphosphate.

Methods

CAPRIE was a randomised, blinded, international trial designed to assess the relative efficacy of clopidogrel (75 mg once daily) and aspirin (325 mg once daily) in reducing the risk of a composite outcome cluster of ischaemic stroke, myocardial infarction, or vascular death; their relative safety was also assessed. The population studied comprised subgroups of patients with atherosclerotic vascular disease manifested as either recent ischaemic stroke, recent myocardial infarction, or symptomatic peripheral arterial disease. Patients were followed for 1 to 3 years.

Findings

19 185 patients, with more than 6300 in each of the clinical subgroups, were recruited over 3 years, with a mean follow-up of 1 91 years. There were 1960 first events included in the outcome cluster on which an intention-to-treat analysis showed that patients treated with clopidogrel had an annual 5 32% risk of ischaemic stroke, myocardial infarction, or vascular death compared with 5 83% with aspirin. These rates reflect a statisticaly significant (p=0 043) relative-risk reduction of 8 7% in favour of clopidogrel (95% CI 03–165). Corresponding on-treatment analysis yielded a relative-risk reduction of 9–4%. There were no major differences in terms of safety. Reported adverse experiences in the clopidogrel and aspirin groups judged to be severe included rash (0–26% i/s0–10%), diarrhoea (0–23% vs 0 11%), upper gastrointestinal discomfort (0–97% vs 1 22%), intracranial haemorrhage (0–33% vs 0–47%), and gastrointestinal haemorrhage (0–52% vs 0–72%), respectively. There were ten (0–10%) patients in the clopidogrel group with significant reductions in neutrophils (<1·2 × 109/L) and 16 (0·17%) in the aspirin group.

Interpretation

Long-term administration of clopidogrel to patients with atherosclerotic vascular disease is more effective than aspirin in reducing the combined risk of ischaemic stroke, myocardial infarction, or vascular death. The overall safety profile of clopidogrel is at least as good as that of medium-dose aspirin.

 

 

下記はテクロスから引用;

EESの留置を受けた透析患者と非透析患者における冠動脈の石灰化の影響: XIENCE V JAPAN PMS

XIENCE V JAPAN PMSより、透析患者においては、冠動脈へのXience V/Promusエベロリムス溶出ステント(EES)留置後の成績は石灰化の程度により差はないものの、非透析患者よりも不良であり、非透析患者においては、中等度/高度の石灰化が認められると再狭窄率、及びMACEの割合が上昇することが、土谷総合病院の塩出宣雄氏により、第79回日本循環器学会学術集会のOral Presentationセッションで発表された。

本研究では、2010年3月から2011年6月に日本の47施設より、本邦におけるEESの市販後調査であるXIENCE V JAPAN PMSに登録され、冠動脈にEESの留置を受けた透析患者と非透析患者において、冠動脈の石灰化の影響を検証した。透析患者では中等度/高度石灰化(Ca+)は34人(37病変)に認められ、39人(51病変)では石灰化なし/軽度(Ca-)であり、非透析患者ではCa+が343人(363病変)に認められ、1,165人(1,369病変)はCa-であった。

1年の造影追跡のコアラボ評価によるステント内再狭窄率は、透析患者ではCa+群で20.0%、Ca-群で18.5%と差はなかったが、非透析患者においてはCa+群で5.6%、Ca-群で2.0%と有意差が示された(p=0.001)。また、1年のMACEの割合も透析患者ではCa+群で約18%、Ca-群で約25%と両群とも高かったが、有意差はなく、非透析患者ではCa+群では約7%と、Ca-群の約2%と比較し有意に高かった(p<0.01)。

塩出氏は、「非透析患者において中等度/高度石灰化病変が認められると、臨床、及び造影成績が不良であったものの、透析患者においては石灰化の程度にかかわらず成績は不良であったと、まとめた。

 

3種のエベロリムス溶出(EES)ステント設計のための血液透析を含む末期慢性腎臓病患者における冠動脈ステント移植の臨床転帰の比較:生体吸収性ポリマー-EES、プラチナクロム-EES、およびコバルトクロム-EES

佐藤高雄 

背景

新世代の生体吸収性ポリマーエベロリムス溶出ステント(BP-EES)が入手可能です。この研究は、末期の慢性腎疾患患者におけるより確立されたステント設計、すなわち白金クロム-EES(PtCr-EES)およびコバルトクロム-EES(CoCr-EES)と比較したBP-EESの臨床転帰を比較することを目的とした(CKD)(血液透析(HD)を含む)。

メソッド

 104例のCKD患者に、BP-EES [ n  = 44]、PtCr-EES [ n  = 45]、CoCr-EES [ n = 52]のステントを埋め込んだ。すべての患者は、移植後12カ月でフォローアップ冠動脈造影を受けた。末期CKDは、推定糸球体濾過率(eGFR)<30mL /分/1.73m 2と定義された、またはHDの必要性。目標病変血行再建術(TLR)、ステント血栓症(ST)、および主要有害心イベント(MACE)の3つのステント群の間で、以下の結果変数を比較した。定量的冠動脈造影法を用いて、最小ステント直径(MSD)および直径狭窄(%DS)を測定した。

結果

TLRおよびMACEの全体的な割合は、STの発生率がなく、それぞれ14.6%および30.8%であった。移植直後のMSD(P  = 0.22)および%DS(P  = 0.42)は、3群間で同等であった。しかし、BP-EES群(22.7%)では、PtCr-EES群(8.8%)およびCoCr-EES群(9.6%)と比較して、12ヶ月間の追跡調査において、TLRが高くなる傾向が観察された(P  = 0.07)。late loss(内腔径の遅れ)は、PtCr-EES(0.20±0.61mm)およびCoCr-EES(0.25±0.70mm)群(P  = 0.03)よりBP-EES(0.51±0.64mm)群で有意に大きかった。

結論

BP-EESは、CKDの末期の患者またはHDの必要性がある患者のステント内再狭窄のリスクを増加させる可能性がある。

 

 

 

BP生分解性ポリマー(biodegradable polymer;BP)に関して下記の通り;

循環器トライアルデータベースから引用;

BIO-RESORT

 

 

 

 

非常に薄いストラットの新規生分解性ポリマーを使用した,薬剤溶出速度や量などが異なる2種類のステント(everolimus溶出ステント,sirolimus溶出ステント)の,新世代耐久性ポリマーステントzotarolimus溶出ステントに対する安全性,有効性における非劣性を検証するall comer試験。

一次エンドポイントは12か月後の安全性(心臓死あるいは標的血管関連心筋梗塞[MI])と有効性(標的血管再血行再建術)の複合エンドポイント。

 
 

超薄型ストラットに生分解性ポリマー(biodegradable polymer;BP)を組み合わせた Sirolimus溶出ステント (BP-SES: Orsiro)・Everolimus溶出ステント(BP-EES: Synergy)を,薄型ストラットの耐久性ポリマー Zotarolimus溶出ステント (DP-ZES: Resolute Integrity)と比較するall-comerの大規模臨床試験である。 
2008年にLancetに発表されたLEADERS trial以降,両手に余るほどのBP-DES vs DP-DESの大規模比較試験が行われてきた。しかし,主要心血管イベントは比較した全ての試験で一年次に有意差はついていない。今回の BIO-RESORTも同様であり,まだまだ予選ラウンドの結果報告である。
さらに言うなら,長期観察で臨床症状に有意差がついたのは Biolimus溶出ステント(BP-BES: BioMatrix)と第一世代DES(DP-SES: Cypher)を比較したLEADERS trial 5年が最初で最後である。これ以降のISAR-TEST-4 trial(BP-SES vs DP-SES)5年, COMPARE II/ NEXT(BP-BES vs DP-EES)3年のnegativeな結果を見ると, BPの効果,言い換えればポリマーの功罪を確かめるには観察期間が短すぎるのか,あるいはポリマーの消退自体に臨床的意義がないのかは,現時点でも不明確のままである。
本試験での注目点は2つあり,まずは超薄型ストラットが新しい展開を生むのかどうかは興味深い。従来の金属ステント(BMS)では,薄いストラットほど内皮化しやすく,血栓化や内膜増殖が少ないことが証明されている。今回対象となった BP-DESはポリマーが溶けて“通常のBMS”に戻った後,面目躍如となるのだろうか?
もう一つは7割がACSだった対象症例の特殊性が結果に与える影響である。状況は異なりメカニズムも不明だが, AMI症例に対するBP-BESとBMSとの比較試験(COMFORTABLE AMI)では,2年次までtarget vessel MIが前者で有意に少なく,LEADERSのSTEMIサブグループでもHR; 0.40で有意に BP-BESがMACEを抑制した。 ACSの基盤となる病変と生分解性ポリマーの間に未知の蜜月関係が存在する可能性は否定できない。
いずれにしろ今回も,結論はこの先 4年間の“決勝ラウンド”に先送りである。あまり期待しないで待つことにしよう。(中野
中村永井

 
 

無作為割付け,単盲検(術者にはオープン),多施設(オランダの4施設),intention-to-treat解析。

 
 

追跡期間は12か月。
実施期間は2012年12月21日~’15年8月24日。

 
 

3,514例・4,663病変。ガイドラインあるいは手技者の判断による薬剤溶出性ステントによるPCIが必要な18歳以上の患者。急性冠症候群(ACS),新規・再狭窄病変,冠動脈あるいはバイパス病変のすべてを対象とし,病変長,参照血管径,病変数,治療疾患血管数は問わなかった。
除外基準:一次エンドポイント発生前のその他の薬剤・デバイスランダム化比較試験参加者,6か月以内に抗血小板薬2剤併用(DAPT)治療を中断する必要のある手術の予定例,溶出薬剤あるいは試験治療に必要な抗血栓薬非忍容例など。
■患者背景:平均年齢63.9歳,女性28%,BMI 27.4kg/m²,現喫煙30%,ACS 70%(ST上昇型MI 31%,不安定狭心症18%),既往:MI 19%,PCI 18%,CABG 8%,脳卒中7%,冠動脈疾患家族歴46%,糖尿病18%,高血圧46%,高脂血症38%。
・手技背景:ランダム化されたステントのみの留置98%,総ステント長/患者31mm(中央値),ダイレクトステント17%,後拡張81%,橈骨動脈アクセス45%,多枝治療18%,冠動脈血流予備能(FFR)測定13%。

 
 

ガイドワイヤー挿入後あるいは前拡張後,下記3群にランダム化。
everolimus溶出ステント群(1,172例・1,532病変):プラチナ・クロム合金製のSynergyステント(FDAが承認した最初の生分解性ポリマーステント)。ストラット厚(ステントサイズ)は74μm(≦2.5mm), 79μm(3.0~3.5mm), 81μm(4.0mm)。ステント径2.25~4.0mm,ステント長8~38mm。
sirolimus溶出ステント群(1,169例・1,551病変):コバルト・クロム合金製のOrsiroステント。60μm(≦3.0mm), 80μm(>3.0mm)。ステント径2.25~4.0mm,ステント長9~40mm。
zotarolimus溶出ステント群(1,173例・1,580病変):コバルト・クロム合金製のResolute Integrityステント。ストラット厚91μm,ステント径2.25~4.0mm,ステント長8~38mm。
病変前拡張,ダイレクトステント,ステント後拡張は手技者の判断に委ね,追加のステントが必要な場合は試験ステントの使用を推奨した。DAPTは6~12か月。

 
 

[手技成績]
狭窄率*は留置前73.0%→留置後17.3%。最小血管径*は0.71mm→ 2.20mm,セグメント内急性獲得径*1.47mm。* 中央値(全病変の解析)
[一次エンドポイント]
everolimus溶出ステント群,sirolimus溶出ステント群のzotarolimus溶出ステント群に対する非劣性が示された(everolimus溶出ステント群55例[5%],sirolimus溶出ステント群55%[5%] vs zotarolimus溶出ステント群63例[5%]:両群とも絶対リスク差-0.7%;95%信頼区間-2.4~1.1;片側95%信頼区間上限0.8%,非劣性のp<0.0001)。
安全性のエンドポイントである心臓死は,3群ともそれぞれ10例(1%),標的血管関連MIは, 25例(2%),26例(2%)vs 31例(3%),有効性のエンドポイントである標的血管再血行再建術は,23%(2%),26例(2%) vs 30例(3%)であった。
標的血管関連MIのzotarolimus溶出ステント群にくらべたeverolimus溶出ステント群のハザード比は0.81(p=0.42),sirolimus溶出ステント群は0.84(p=0.51),標的血管再血行再建術はそれぞれ0.77(p=0.34), 0.87(p=0.60)。
[ステント血栓症
DAPT実施例は,退院時3,419例(97%),1年後の追跡時は2,939/3,432例(86%)。
ARC定義によるdefiniteステント血栓症はeverolimus溶出ステント群,sirolimus溶出ステント群それぞれ4例(0.3%),zotarolimus溶出ステント群3例(0.3%)。definiteあるいはprobableステント血栓症も5例(0.4%),5例(0.4%),6例(0.5%)と3群間に差はなかった。
everolimus溶出ステント群での非致死的な晩期のdefinite血栓症2例はDAPT期間中で,sirolimus溶出ステント群での同様の血栓症1例はDAPT非実施期間中,zotarolimus溶出ステント群での非致死的definite血栓症1例および致死的probable血栓症1例はDAPT実施期間中に発生した。
★考察★非常に薄いストラットの生分解性ポリマーの異なる薬剤溶出性ステント(everolimus,sirolimus溶出)の耐久性ポリマーzotarolimus溶出ステントに対する,12か月後の安全性,有効性において非劣性が示された。これを前提に今後,1年後以降の長期ベネフィットの検討されることになる。
ClinicalTrials gov No: NCT01674803

Orsiroステントは、抗血栓作用のあるシリコンカーバイドがありそれにPLLA(ポリ乳酸)がおおわれている。PLLAは450日(1年半くらい)で溶解する。だから、その1年半は抗血栓作用がないのではと言われていると。←詳細不明。

 

 

 

 

 

EXCEL

 

Evaluation of XIENCE versus Coronary Artery Bypass Surgery for Effectiveness of Left Main Revascularization

 

 

 

欧米のガイドラインは左主幹部病変に対する血行再建治療としてCABGを推奨しているが,症例によっては薬剤溶出性ステントによるPCIが代替治療となり得ることがランダム化比較試験で示されている。
解剖学的複雑度が低度~中等度の非保護左主幹部病変患者において,everolimus溶出ステント(EES)使用のPCIがCABGに対し非劣性であることを検証する。

一次エンドポイントは,3年後の全死亡,脳卒中心筋梗塞(MI)の複合エンドポイント。

 
 

N Engl J Med. 2016; 375: 2223-35. へのコメント
EXCEL試験はSYNTAX score 32以下の非保護左主幹部疾患患者において,everolimus-eluting stentを用いたPCIのCABGに対する非劣性を検証する試験である。試験のデザインはSYNTAX試験からの教訓を上手に取入れている。一次エンドポイントは,冠動脈血行再建を含まない3年の死亡/心筋梗塞/脳卒中の複合エンドポイントで,冠動脈の解剖学的条件が複雑なSYNTAX score 33以上の患者は除外し,使用するステントはSYNTAX試験で用いられたTAXUS stentよりも明らかに優れた成績が報告されているbest-in-classの薬剤溶出性ステントeverolimus-eluting stentが選ばれている。
結果としては,3年の死亡/心筋梗塞/脳卒中の発生率は,PCI 15.4%,CABG 14.7%と,PCIのCABGに対する非劣性が示され,3年の死亡率もPCI 8.2%,CABG 5.9%と差を認めなかった。虚血に基づく冠動脈血行再建は12.6%,7.5%とPCI群でやや高かった。本試験において特筆すべきことは,これまでに施行されたPCI vs CABG trialsでは評価されてこなかった周術期の主要合併症にフォーカスを当てたことである。30日以内の心筋梗塞,大出血,輸血,不整脈,予定外の手術処置,腎不全,胸骨離開,感染,長期挿管などの合併症は,CABG群でPCI群よりも遥かに高率にみられた。冠動脈の治療にあたって患者が真に避けたいものは,これらの周術期合併症である。3年の生存率が同等であれば,全身麻酔,胸骨正中切開を要するCABGよりも,意識下の橈骨動脈穿刺により1時間程度で終了し,手技直後から歩行可能なPCIを選択することは当然であろう。EXCEL試験の結果を受けて,PCIにより十分満足のいく血行再建が達成できる見通しのある非保護左主幹部疾患患者に対するPCIは, Class 1と位置づけられる。(木村

 
 

無作為割付け,オープン,多施設(17か国126施設),intention-to-treat解析。

 
 

追跡期間は3年(中央値)。
登録期間は2010年9月29日~’14年3月6日。

 
 

1,905例。18歳以上,非保護左主幹部に血管造影上の目視による≧70%狭窄を有する患者,または狭窄率50~<70%で左主幹部の血行動態不安定による虚血の非侵襲的根拠・IVUS評価の最小血管面積≦6.0mm²・冠血流予備比(FFR)≦0.80のいずれか1つ以上に該当する患者,あるいは左主幹部病変に相当する疾患のある患者で,施設評価の解剖学的複雑度が低度~中等度(SYNTAXスコア≦32),PCI・CABGの適応に関しインターベンション医と心臓外科医から成るハートチームの合意がえられたもの。
除外基準:左主幹部のPCI既往,1年以内の左主幹部以外の病変に対するPCI,CABG既往,左主幹部狭窄率<50%で左主幹部病変相当疾患がないもの,目視による推定血管径<2.25mmまたは>4.25mmなど。
■患者背景:平均年齢(PCI群66.0歳,CABG群65.9歳),男性(76.2%, 77.5%),糖尿病(30.2%, 28.0%),高血圧治療例(74.5%, 73.9%),高脂血症治療例(71.5%, 69.3%),現喫煙(24.1%, 20.8%),既往(MI:18.1%, 16.9%,PCI:18.4%, 15.9%,脳卒中・一過性脳虚血発作:5.5%, 7.0%),末梢動脈疾患(10.3%, 8.8%),BMI(28.6, 28.8kg/m²),腎機能障害(17.6%, 15.4%),貧血(26.9%, 22.6%)。
臨床所見:発症後7日以内の亜急性MI(15.0%, 14.8%;非ST上昇型:13.2%, 12.9%),不安定狭心症(24.2%, 24.6%),安定狭心症(53.1%, 53.2%)。
解剖学的複雑度:施設評価(低度[SYNTAXスコア≦22]:59.2%, 61.8%,中等度[23~32]:40.8%, 38.2%),中央評価(914例,957例)(低度:32.2%, 39.3%,中等度:42.8%, 37.3%,高度[≧33];25.1%, 23.4%),遠位左主幹部分岐部病変80.5%,2~3枝病変51.3%。

 
 

PCI群(948例):フッ素ポリマー使用コバルトクロム製EES留置による全虚血領域の完全血行再建を目指した。IVUSガイド下での施行を強く推奨。周術期のheparin,bivalirudinの使用は許可したが,GP IIb/IIIa受容体拮抗薬は推奨しなかった。抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)をPCI前に開始し,手技後≧1年継続。
CABG群(957例):オンポンプ・オフポンプは問わず,狭窄率≧50%、血管径≧1.5mmの全血管の解剖学的完全血行再建を目指した。動脈グラフトの使用を強く推奨。上行大動脈,心室・弁機能の評価に経大動脈壁エコー,経食道心エコーを推奨した。
目視による推定狭窄率≧50%の左主幹部病変でその他の登録基準を満たさなかったスクリーニング開始からの連続症例1,000例(CABG 648例,PCI 331例,非施行21例)を,登録コホートとした。

 
 

[手技成績]
PCI群での血行再建術施行例は942例,うちPCIを最初に施行したのは935例。治療病変数1.9/患者,使用ステント数2.4/患者,総ステント長49.1mm。EES留置例は99.2%。治療血管は,左主幹部100%,左前下行枝28.3%,左回旋枝16.6%,右冠動脈26.7%で,77.2%がIVUSガイド使用。
CABG群での血行再建術施行例は940例,うちCABGを最初に施行したのは923例。使用グラフト数は2.6/患者(動脈1.4,静脈1.2),内胸動脈グラフト使用98.8%,オフポンプCABG 29.4%。バイパス作成血管は,左前下行枝98.8%,左回旋枝88.2%,右冠動脈37.8%。
ランダム化から手技までの時間はPCI群3.3日,CABG群6.7日,手技時間はそれぞれ83分,243分,手技後入院期間は5.4日,12.7日。
[一次エンドポイント]
PCI群のCABG群に対する非劣性が認められた(15.4% vs 14.7%;群間差0.7%;97.5%信頼区間上限4.0%;非劣性マージン4.2%, p=0.02) 。
年齢,性別,糖尿病の有無,腎機能などのサブグループでも結果は一貫していた。
[二次エンドポイント]
3年後のPCI群のCABG群に対する優越性は認められなかった(ハザード比1.00[HR];95%信頼区間0.79~1.26,優越性p=0.98)。
30日後の全死亡,脳卒中,MIの複合エンドポイント(4.9% vs 7.9%),3年後の複合エンドポイント+虚血による再血行再建術(23.1% vs 19.1%)についても,PCI群のCABG群に対する非劣性が示された(それぞれ非劣性p<0.001, p=0.01,優越性p=0.008, p=0.10)。
一次エンドポイントの構成イベントには有意な両群間差はなかったが(死亡:8.2% vs 5.9%,心血管死:4.4% vs 3.7%,脳卒中:2.3% vs 2.9%,MI:8.0% vs 8.3%),周術期MI(3.8% vs 6.0%, p=0.03),ST上昇型MI(1.3% vs 2.8%, p=0.02)はCABG群のほうが有意に多く,自然発症MIはPCI群に多かった(4.3% vs 2.7%, p=0.07)。
30日~3年後のpost hoc landmark解析では,一次エンドポイントはPCI群のほうが多かった(11.5% vs 7.9%, p=0.02)。
虚血による再血行再建術はPCI群のほうが多かったが(12.6% vs 7.5%*),同群のdefiniteステント血栓症はCABG群の症候性グラフト閉塞にくらべ有意に少なかった(0.7% vs 5.4%)。
TIMI基準の大・小出血もPCI群のほうが少なかった(3.7% vs 9.0%*)。
30日以内の主要周術期有害イベントはPCI群のほうが少なく(8.1% vs 23.0%*),これは主に重大な不整脈(2.1% vs 16.1%*),抗菌薬が必要な感染症(2.5% vs 13.9%*),2単位以上の輸血(4.0% vs 17.0%*)が同群で少なかったためであった。*p<0.001 
★結論★施設評価によるSYNTAXスコアが低度~中程度の左主幹部病変患者において,3年後の死亡,脳卒中心筋梗塞の複合エンドポイントでのEESを用いたPCI群のCABG群に対する非劣性が示された。
ClinicalTrials.gov No: NCT01205776

 

2wire使用時のガイドライナーなどの子カテ

7Frのガイドカテの際に、、、

2つのwireを使用している時、例えば、D1にrunthrough、LAD本幹にsion blue。

その時に子カテを使用したい時に7Frガイドカテの場合だが、、、、

 

5.5Frのガイドライナと6Frガイドプラス(実際の大きさは5.5Fr)は、2wireでも、2wireの内の1本のwireがサポートカテ(子カテ)の外側でも入る!!!

 

 

肺塞栓、深部静脈血栓症 新ガイドライン2018.3発表

https://www.m3.com/open/overseasAcademy/report/article/10659/から引用

 

 

 

2018年3月23日,「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」1)が公表された。2004年の初版発表後,2009年に1回目の改訂(旧版)が行われ,今回が2回目の改訂となる。旧版の構成から大きく変更され,2017年改訂版では「急性肺血栓塞栓症(PTE)」,「慢性PTE」,「深部静脈血栓症(DVT)」,「静脈血栓塞栓症(VTE)の予防」に分け,それぞれについて診断・治療,あるいは予防法について記載。さらに,各項目の最初に推奨クラスならびにエビデンスレベルが示された。

ここでは,山田典一氏(桑名市総合医療センター桑名東医療センター副病院長)より発表されたおもな改訂点を中心に紹介する。

  • Xa阻害薬が新たに使用可能となり,PTEの治療は大きく変化

抗凝固療法の継続期間は旧版と大きく変わっていない。危険因子が可逆的である場合には3ヵ月間,誘因のない(特発性の)VTEでは少なくとも3ヵ月間の投与(クラスI,レベルA),再発例および癌患者では,より長期間の投与とされた(クラスI,レベルBおよびクラスIIa,レベルB)。なお,先天性凝固異常症については,個々の素因によってリスクも異なることから,画一的な期間の記載は削除された。

  • 急性PTEに対する血栓溶解療法の適応は広範型PTEに限定

旧版ではショックや低血圧が遷延する血行動態不安定例,さらに正常血圧であるが右室機能不全ならびに心臓バイオマーカー陽性例に血栓溶解療法が推奨されていたが, 後者の正常血圧であるが、、、、に関し,2017年改訂版では非経口薬による抗凝固療法が第一選択と位置付けられた(クラスIIa,レベルB)。★急性肺塞栓の診断が確実にされて、血行動態が不安定な重症例のみに適応(低酸素血症や右心不全がある場合)。軽症例で行うと出血の副作用のほうが出てトータルで考えると不利益が大きい。モンテプラーゼ(クリアクター)の使い方について説明します。モンテプラーゼは半減期が長くワンショットで使用可能です。27,500IU/kgを80,000IU/mlとなるように生理食塩水で溶解して10ml/分で投与します。クリアクター(40万IU,80万IU,160万IU)をそれぞれ5ml、10mlまたは20mlに溶解します。→★つまり、当院では80万IUが採用されているので、2V(160 IU)をオーダーしそれを20ml NSで溶解し、体重50㎏ならおよそ140万IU(137万5000IU)であり、17mlを2分間で投与します。クリアクター投与6時間後からヘパリンを開始し、凝固系や血小板凝集能のリバウンドに備えます。

  • 下大静脈フィルターの適応が限定され,フィルター回収の重要性にも言及

わが国では過剰使用が指摘されている下大静脈フィルターについて,2017年改訂版ではその適応が限定された。具体的には,抗凝固療法を行うことができないVTE(ただし,末梢型DVTでは中枢への伸展例に限る;クラスI,レベルC),十分な抗凝固療法中のPTE増悪・再発例(クラスIIa,レベルC),抗凝固療法が可能でも,残存血栓の再度の塞栓化により致死的となりうるPTE(クラスIIa,レベルC)などに限定された。

また,回収可能型下大静脈フィルターは長期留置による合併症のリスクがあることから,必要性がなくなった場合は早期に抜去を行うことへの言及が加わった(クラスI,レベルC)。

  • 慢性PTEに対する新たな薬物治療や経皮的バルーン肺動脈形成術の推奨

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,器質化した慢性PTEにより肺血管抵抗が上昇し,肺高血圧となった病態で,2015年にはわが国でも指定難病として認定されている。近年は,肺血管拡張薬リオシグアトの登場や,カテーテル治療による有効性の確立など治療法が大きく変化したことを受け,今回,改訂が加えられた。外科的治療不適応または外科的治療後に残存・再発したCTEPHに対し,肺血管拡張薬リオシグアトによる内科的治療を第一選択とし(クラスI,レベルB),肺動脈内膜摘除術の適応とならない症例に対し経皮的バルーン肺動脈形成術を行うこと(クラスI,レベルC)が記載された。

なお,本ガイドラインの改訂と同時期に「肺高血圧症治療ガイドライン」の改訂作業が進行していたことから,CTEPHの治療に関する内容については内容の統一も図られた。

  • DVT治療もPTEと同様,経口Xa阻害薬の登場により治療戦略が大きく変化

中枢型であればPTEと同様に初期治療期,維持治療期に非経口抗凝固薬あるいはXa阻害薬を投与(クラスI,レベルA)とされたが,末梢型であれば画一的に抗凝固療法を施行することはせず(クラスI,レベルB),施行する場合は3ヵ月までとする(クラスI,レベルC)。

なお,アスピリンのDVT再発予防効果は,抗凝固療法よりは劣るものの,プラセボとの比較では一定の効果が認められている。そのため,誘因のないDVTの抗凝固療法中止後,抗凝固療法の延長を希望しない,または可能でない場合,推奨クラスは低いものの,DVT再発予防としてのアスピリン投与が追加された(クラスIIb,レベルB)。

また,DVTの理学療法として,初期治療において抗凝固療法が行えた場合,ベッド上安静よりも早期歩行が推奨された(クラスIIa,レベルB)。旧版ではDVT治療や血栓後症候群(PTS)予防のための弾性ストッキング着用がクラスⅠで推奨されていたが,最近の大規模無作為化試験の結果を受け,PTS予防のために画一的に弾性ストッキングの着用を長期間継続させることは推奨されないとした(クラスIII,レベルB)。

  • VTE予防に使用可能な抗凝固薬が追加

VTEの予防においては,整形外科手術後に限って,Xa阻害薬エドキサバン(リクシアナ)が保険適用されたことが追加された。整形外科領域のみであるが,Xa阻害薬のエド キサバンはTKA後,THA後,HFS後のVTE予防に保険 適用されている.臨床試験結果では30 mgを1日1回経口 投与した場合,TKA術後の無症候性 DVTは出血性合併 症発症率を上昇させずに48.3%から12.5%へ低下した. 投与方法は手術後12時間を経過し,出血がないことを確 認してから1日1回30 mgを11~14日間経口投与する.本 剤を15日間以上投与した場合の有効性および安全性は検 討されていない.なお,高度の腎機能障害(クレアチニンリアランス:Ccr<30 mL/分)患者では禁忌とされ,中 等度(30≦ Ccr<50 mL/分)の例では個々の患者の VTE のリスクおよび出血リスクを評価したうえで,15 mg 1日1 回に減量することを考慮する. 体重40 kg未満,高齢者に おいては出血のリスクが増加する可能性があるため慎重な 投与を考慮する.また,エドキサバンはP糖蛋白阻害作用 を有する薬物との相互作用によりバイオアベイラビリティ が上昇し,出血リスクを増大させる可能があるため,減量 を考慮する.ダビガトランとP糖蛋白質を阻害するベラパミルやキニジン(硫酸キニジン),アミオダロン(アンカロン1397904493など)を併用した場合,ダビガトランの血中濃度が上昇することが報告されている。ダビガトランの血中濃度に与える影響が大きいと推測されるため,イトラコナゾールの経口製剤は併用禁忌とされている。また,そのほかのP糖蛋白質阻害薬(ベラパミル(ワソラン),アミオダロン,キニジン,タクロリムス,シクロスポリン,リトナビル,ネルフィナビル,サキナビル,クラリスロマイシンなど)の経口製剤も併用注意となっている。これらの併用禁忌・注意薬について,ダビガトランとの併用試験による相互作用の検討結果を以下に示した。

弾性ストッキングについては,旧版ではクラスIで推奨されていたが,一部領域(脳卒中後)のDVTを予防しないことが報告されたため3),2017年改訂版では中リスク患者に対する推奨はIIa,レベルAとされた。

なお,本疾患においてはXa阻害薬などの登場により治療戦略が大きく変化しているものの,残念ながら日本人を対象としたエビデンスは限られている。そのため,海外のガイドラインなどを参考にしつつ,日本人でのデータや現在用いられている標準的な検査法や治療法が反映されたものになっている点にも言及された。