心音図

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心音図

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正常心音では,I音とⅡ音が聴取されます。比較的高調な音で,膜型聴診器で聴取します。

Ⅰ音

僧帽弁および三尖弁の閉鎖音です。心尖部で大きく聴取されます。

Ⅱ音

大動脈弁および肺動脈弁の閉鎖音で,大動脈弁の閉鎖音はⅡA,肺動脈弁の閉鎖音はⅡPで示されます。心基部で大きく聴取されます。

過剰心音

正常では聴こえないⅢ音やⅣ音は過剰心音です。心室壁の伸展性の障害により,流入する血液量が増加して,血液が心室壁にぶつかって発生します。

心尖部で最もよく聴取され,より低音のためベル型聴診器で聴取されやすい特徴があります。

Ⅲ音

心室の拡張期に心房から心室へ血液が流入する際に発生する音です。

30歳以下の人や妊婦では正常でも聴取しますが,壮年以上で呼気あるいは立位で消失しないものは異常です。僧帽弁逆流,動脈管開存,心室中隔欠損,左心不全,三尖弁逆流,肺動脈弁逆流,心房中隔欠損などで認めます。

Ⅳ音

右室あるいは左室負荷,または心室壁の伸展性が低下した状態で心房の収縮に一致して生じ,その強さは負荷の程度とよく比例します。乳幼児では正常でも聴取しますが,成人で聴取する場合は異常です。高血圧,左心不全,大動脈狭窄,肥大型心筋症,虚血性心疾患,肺高血圧,肺動脈狭窄などで認めます。

 

  • 僧帽弁狭窄症でⅠ音増強なのに,大動脈弁狭窄症でⅡ音減弱の理由


・房室弁(基本的には僧帽弁)が閉まる音。

心室圧が心房圧より高くなる瞬間に僧房弁は閉じる。
⇒音の強さは,弁が開いている時間長い程音が大きくなるということ、かつ弁より先の圧が高いほど大きくなる
⇒標準では,拡張期末期に弁がほぼ閉まりかけている⇒収縮期開始時に完全に閉まる
僧帽弁狭窄症(MS)の場合
・心房から心室への血流が遅い→なかなか心室圧が心房圧より高くならない。
拡張期終末に,弁がかなり長時間開いている、かつ心室は大動脈と違い閉鎖空間であり、MSにより心室圧が低くなることはない
⇒収縮期開始と同時に,弁が急激に閉まる
⇒Ⅰ音増強
というわけです。

・大動脈弁,肺動脈弁の閉まる音
⇒拡張期開始時に、大動脈圧,肺動脈圧により閉まる(動脈圧が心室圧より高くなる瞬間に閉まる)
 大動脈弁狭窄症(AS)の場合
・大動脈への血流が減る⇒大動脈は心室と違い閉鎖空間ではない、かつASにより通常の血圧低い(=大動脈圧が低い)→大動脈圧が低い+弁尖が硬くて動きにくい⇒Ⅱ音減弱。

 

  • Ⅱ音分裂

・生理的分裂

その名の通り普通の人でも聞こえる吸気時の分裂。

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吸気時;

① 息を吸うと横隔膜が下がって胸腔内圧が低下する

② 胸腔内圧による圧迫が取れた静脈は拡張して、右室へ戻ってくる血液の量が増える=静脈還流量の増加

③ 右室が肺動脈へ駆出する血液量が増える

④ 駆出時間の延長によって肺動脈弁の閉鎖 (IIP)が遅れる

・固定性分裂

呼吸によらずIIAとIIPの間隔が固定されていて、変わらない。心房中隔欠損症(ASD)。

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ASDでは左→右シャントが起きることにより、右心系の容量負荷が常にかかっている。そのため右室から肺動脈への駆出時間が長くなり、IIPは呼吸にかかわらず正常より遅れている。また、吸気時に静脈還流量が増えて右心系へ血液がたくさん来たとしても、もともと容量負荷がかかっているためそれ以上は増えにくく、増えたとしても左→右シャントが減少することによってその分は相殺されてしまうため、呼気時と分裂具合は変わらなくなる。※ちなみに左心房にとっては、吸気時には肺血管が広がって血流がプールされるため、血液が帰りにくくなる。そのため左心房から右心房へシャントする血液量も減る、という機序もある。

・病的分裂

呼気でも吸気でもII音が分裂して聞こえる。右室の駆出時間が伸びたり、遅れたりする場合。肺動脈弁が遅れて閉じるか、もしくは大動脈弁が早期に閉じるか。肺動脈狭窄症(PS)や右脚ブロック(RBBB)やMRや心室中隔欠損

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PSの場合:肺動脈が狭いため、右室から肺動脈へ駆出するのに時間がかかる→吸気・呼気ともに肺動脈弁の閉鎖が遅れる。右脚ブロックの場合:左室の興奮の後に右室の興奮が出てくるため、右室の収縮が遅れて肺動脈弁の閉鎖が遅れる。MRの場合は、普通A弁は大動脈圧が左室圧より高くなった瞬間に閉じるが、収縮期に左室から左房へ逆流起こっており左室圧は圧が低くなり、大動脈圧が容易に左室圧より高くなり、それにより早期にA弁が閉じる。VSDも左室から左房へ常に血流が流れており左室圧が通常より低い。そのためA弁が早期に閉じる。

・奇異性分裂(奇異=奇妙に異常である→逆転)

IIAとIIPの順序が逆転し、肺動脈弁の方が早く閉まる。また、普通の分裂とは逆で吸気時よりも呼気時の方が分裂がよく聞こえる (奇異性の所以?)。左室の駆出時間が伸びたり、遅れたりする場合で、大動脈弁狭窄症(AS)や左脚ブロック(LBBB)が主な例。病的分裂とは真逆の機序。

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ASの場合、大動脈弁が狭いため、左室から大動脈へ駆出するのに時間がかかる→吸気・呼気ともに大動脈弁の閉鎖が遅れ、IIPの後にくるようになる。左脚ブロックの場合、右室の興奮の後に左室の興奮が出てくるため、左室の収縮が遅れて大動脈弁の閉鎖が遅れる。