FAME

FAME

Fractional Flow Reserve versus Angiography for Multivessel Evaluation

 

目的;

多枝病変に対し薬剤溶出性ステント(DES)を植込む患者において,植込みの標準ガイドである血管造影に,血流予備比(FFR:狭窄血管の最大血流量/正常血管の最大血流量比)のルーチン測定を行った場合に転帰が改善するかを検討する。

一次エンドポイントは1年後の主要有害心イベント(死亡,心筋梗塞[MI],血行再建術再施行の複合エンドポイント)。

 

コメント;

N Engl J Med. 2009; 360: 213-24. へのコメント

 

FAMEは2つ以上の病変に対してPCIが予定されている多枝冠動脈疾患患者において,FFRを用いて冠動脈病変の生理的意義を評価し,虚血が証明された病変に対してのみPCIを施行することで,予後が改善すると同時に医療費が削減できるという結果を報告している。多枝冠動脈疾患患者において完全血行再建を行うべきか,culprit病変のみを治療する部分的血行再建で十分かという議論があった。CABGについての報告では完全血行再建がベターとするものが多いが,PCIについての報告では必ずしも完全血行再建がベターの傾向は示されていない。ここで注意すべきは完全血行再建の定義である。これらの議論における完全血行再建の定義は通常,解剖学的完全血行再建であって機能的完全血行再建ではなかった。FAME試験が教えるところは,機能的完全血行再建は解剖学的完全血行再建に優るということである。DEFER試験では,虚血のない患者に対してPCIを施行することで心血管イベントが長期的に減少しないことが明確に示されている。多枝冠動脈疾患患者におけるPCI標的病変の選定という極めて日常的な診療プラクティスが,実際には極めて薄弱な根拠に基づいて施行されているという一例である。DEFER 研究では,50%以上の狭窄病変を有する安定狭心症例を対象に,FFR 値に基づいて FFR < 0.75 であればひきつづきPCI を行う「Reference 群」,FFR ≥ 0.75 であれば PCI を行わず薬物治療を行う「Defer 群」,FFR ≥ 0.75 であってもPCI を行う「Perform 群」の 3 群にランダム化し,FFR 値

を用いて PCI の適応を決定することの妥当性を検討した. 5 年追跡の結果は,Defer 群(FFR ≥ 0.75・薬物治療)の心事故率(心臓死,心筋梗塞)が最も低く,虚血が有意

でない病変への PCI の予後改善効果は証明されなかった.

FAME試験は現時点での追跡期間が1年と短いことが研究のlimitationとして挙げられている。DEFER試験の5年追跡結果をみると,虚血が証明されない病変に対するPCIが追跡期間を延長することによって心血管イベントを減少させることは考えにくい。個人的には追跡期間が1年と短いことはstudy limitationではなくstrengthであると考えている。

 

デザイン;

無作為割付け,多施設(米国と欧州の20施設),intention-to-treat解析。

 

期間;

追跡期間は1年。登録期間は2006年1月~2007年9月。

 

対象患者;

Study Design;

Patients Screened: 1,905

Patients Enrolled: 1,005

Mean Follow Up: 1 year, 5 years

Mean Patient Age: 64.5 years

Female: 26%

Mean Ejection Fraction: 57%

 

Patient Populations:

Patients with stenoses of >50% in at least two of the three major coronary arteries

Lesions amenable for stenting

Exclusions:

Left main disease or previous bypass surgery

ST-elevation MI with creatine kinase >1000 U/L within the last 5 days

Cardiogenic shock

Life expectancy <2 years

Contraindication to drug-eluting stents

Pregnant patients

Extremely tortuous or calcified coronary arteries

Primary Endpoints:

Incidence of MACE, defined as death, MI, or need for repeat revascularization at 1 year

患者背景:平均年齢(FFR guided群64.6歳,血管造影 guided群64.2歳),不安定狭心症:ECG上の変化を伴うもの(14.3%, 18.3%;p=0.09);伴わないもの(15.1%, 17.5%),心筋梗塞既往(36.7%, 36.3%),PCI既往(28.7%, 26.0%),糖尿病(24.2%, 25.2%),高血圧(61.3%, 65.9%),EF(57.2%, 57.1%)。

治療状況:β遮断薬(77.6%, 76.0%),Ca拮抗薬(23.8%, 19.4%;p=0.09),硝酸薬(32.8%, 36.1%),ACE阻害薬/ARB(52.5%, 51.4%),スタチン系薬剤(81.9%, 80.0%),aspirin(91.4%, 91.5%),clopidogrel(60.9%, 58.9%)。

 

治療法;

FFR guided群(509例):FFR+血管造影。FFR≦0.80の場合のみDESを植込み,血管造影 guided群(496例)。

FFRはadenosine 140μg/kg/分の中心静脈静注による反応性最大充血で圧ガイドワイヤーにより測定。全例にPCI施行から1年以上aspirin, clopidogrelを投与。

 

結果;

[手技結果];

FFR guided群:FFR測定成功病変94.0%,

FFR:平均0.7

虚血病変0.60;非虚血病変0.88,

≦0.80;63.0%,

>0.80;37.0%。

[一次エンドポイント:有害心イベント,全イベント]

複合エンドポイント:FFR guided群67例(13.2%) vs 血管造影群91例(18.3%)とFFR guided群で有意に抑制された:相対リスク0.72(95%信頼区間0.54~0.96, p=0.02)。

死亡,MI:37例(7.3%) vs 55例(11.1%);0.66(0.44~0.98, p=0.04)。

全イベント:76例 vs 113例,患者当たりのイベント数は0.15 vs 0.23(p=0.02)。

結論;

多枝病変に対するDES植込み例において,FFRのルーチン測定により1年後の有害心イベント(死亡,非致死的MI,血行再建術再施行)が有意に抑制された。